鳥海山ーモノクロームの情景ー

仙ヶ洞③ 仙ヶ洞を右に見て、外輪に向かってトラバースする。足元から千畳ヶ原に向かって一枚の斜面が切れ落ちていた。スキーヤーにとって垂涎の的になりそうな美しいスロープだ。風紋が刻まれた斜面上部に岩場が見える。ここは文珠岳と伏拝岳の間の、登山道…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

仙ヶ洞② ボサ森の尾根に上がり、灌木帯と吹き溜まりの境を登った。次第に仙ヶ洞が大きく見えてくる。雪原を覆う風紋は、気温上昇でエッジが溶けて繊細さが損なわれていた。仙ヶ洞を構成する巨岩を岩氷(エビノシッポ)が覆っている。岩氷は新鮮さを保ったま…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

仙ヶ洞(2021年2月中旬) 2019年冬の祓川から膝の不調が続いた。重荷を背負って長い距離を歩いたことが負担になったようだ。2020年は、無雪期の山歩きは続けていたが冬の山行を控えた。明けて、2021年、リハビリを続けたことが良かったのだろうか。違和感が消…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

祓川②(2019年3月中旬) 夜になって再び風が強まり、朝になっても止まず小屋を揺する。高曇りの空の下に山頂が見えていた。昨日膝が痛まなかったことに気を良くして、無理なく行ける所までと決めて出発する。スノーシューを履いても膝まで埋まる所や氷化した…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・祓川(2019年3月中旬) 中島台で、膝に軽い痛みがあったのだが、重いテント泊の荷物を背負って長い距離を歩くことが出来た。2週間が過ぎて、痛みと違和感が消えたものの、膝痛はいつ再発するか分からない。中島台の時と同じように、高い所に上れなくても山…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・鳥越川(2019年3月上旬) 谷間に続く踏跡 波打つ雪原から見上げる山頂 北から見る八丁坂付近の山容 東壁を連ねる稲倉岳 夕映えの双耳峰 夕陽に輝く山頂 ヘッドランプで自分の踏み跡を確かめながらテントに戻る。暗くなると南西の風が吹き始めた。バタバタ…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・鳥越川(2019年3月上旬) 一週間後、再び県道象潟矢島線の除雪終点から歩き始めた。前回と同じコースを辿り、三郎沼の一段上のブナの疎林にテントを設営した。ここが森林限界なので、前回のような強風が吹かないことを祈り、氷化した堅い雪を掘り起こして…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

中島台 変形膝関節症の症状があり、2年間冬山を控えていた。その間、膝周りを鍛える筋トレに励んだ。平地のウオーキングと軽い山歩きを続けているうちに奇跡的に痛みが消えた。膝痛が再発する危険はあるとしても、冬山を登れるのは今しかないと考えて中島台…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

七高山(2017年3月上旬) 先月、快晴の朝を迎えていながら、なぜ七高山に行かなかったのだろう。身体的負担は大きかったが、七高山は近くにあったはずだ。その場で見た周囲の光景に満足してしまったのかもしれない。時が経つにつれて、他の季節と同じように…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・影鳥海(3月1日) 朝焼けが始まっていた。栗駒山と月山だけが雲海の上に頭を出している。朝日が昇る前に動き出さなければならないことが分かっていても身体が怠い。雪面から伝わってくる寒気でよく眠れなかった。寒さで固くなった身体の動きは鈍く、夜明け…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・七高山に立つ(2月28日) 目の前を覆い尽す、エビノシッポという軽い響きでは表現できない重量感に溢れる氷の集合体。稜線上の小さな火山礫から大岩まで、すべての突起物が分厚い岩氷を纏っていた。七高山に立ち外輪内壁を振り返る。彼方に月山と朝日連峰…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・滝ノ小屋からソロバン尾根を登り、伏拝岳から虫穴へ(2月28日) ソロバン尾根を登り伏拝岳に着いた時、Hさんが新山から戻ってきた。35年振りの新山登頂を祝福し、下って行く姿を見送る。行者岳の先の鞍部でビバークの準備を済ませて、最小限の荷物を背負い…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

影鳥海の撮影(2017年2月27日~3月1日) 中学生の時、影鳥海を見たのが鳥海登山の始まりだ。七高山で御来光を拝み、振り返って影鳥海に感動し、千蛇谷に流れてきた霧に現れたブロッケンに衝撃を覚えた。この時から半世紀をかけて鳥海山に登り続けてきた。 こ…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・伏拝岳から七高山 西風に煽られながら伏拝岳に立った時、目の前が開けるように雲が流れて、新山と取り巻く外輪山が姿を現した。外輪山を歩き、見えてきた七高山に向かった。 亀の手を思わせる岩氷 外輪内壁と西鳥海 細長く伸びた岩氷 奥に七高山 外輪山か…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

七高山(2016年3月上旬) 先月、晴れ渡った外輪山を見上げて河原宿から下山した。冬の山行は天気に恵まれることが少なく、いつもいつも満足のいく山行が出来るわけではない。それだけに前回の晴天を見逃したことの悔しさは大きかった。 しばらく居座っていた…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・河原宿 しばらく外輪山に登っていないので、明日は晴れていたら行こうと思っていた。夕方になって携帯が鳴り、明後日の午後に仕事が入ってしまった。明後日の午前中に下山できれば仕事に間に合うのだが、気持ちを切り替えるのが面倒だ。それに、山では何が…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

湯ノ台から河原宿(2016年2月中旬) 冬になると寒気が緩む隙に滝ノ小屋に通っている。テーマにしている「風紋の雪原と岩氷に覆われた頂稜」を撮影できるチャンスがなかなか巡って来ないから何度も登ることになる。暖冬続きの日本列島だが、無理が効かなくな…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・月山森 予報通り晴天の朝を迎え、滝ノ小屋を未明に出発した。河原宿に上がってからも、外輪山に向かうか、月山森にするか迷っていた。結局、西寄りに90度方向を変えて雪原を横切って進む。これまで月山森に向かったのは、滝ノ小屋で時間を持て余した時や外…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

湯ノ台から月山森へ(2015年3月下旬) 再び滝ノ小屋に登った。何度登っても雪の表情は同じことが無いので飽きることはない。極端な暖冬のまま三月下旬になり、雪解けが始まっていた。滝ノ小屋に着いた日の午後から天気が崩れて、次の日の午前中まで湿雪交じ…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・七高山(2015年2月下旬) 伏拝岳から、新山を回り込むように七高山に続く外輪の尾根を辿る。行者岳から鞍部に下り、目の前の急斜面を見上げて、鉄バシゴのある正面を登るか右の吹き溜まりを巻くか迷う所だ。雪が安定しているようなので、右にトラバース。…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・外輪山(2015年2月下旬) 夜通し吹いていた風は収まり、北の空に仄白く浮か外輪山の上空に無数の星が煌めいていた。アイゼンを履き、雪に埋まった荒木沢の斜面を登り河原宿に急ぐ。台地に上がった時、朝日が昇ってきた。急斜面に息を切らし、ひたすら登り…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・河原宿(2015年2月下旬) スキーを履いて、鳥海牧場から登った。積雪は安定して、前回のようなラッセルの苦労もなく昼過ぎに滝ノ小屋に着いた。外輪山が見え隠れしている。アイゼンに履き替えて、強風の中を河原宿に登った。北風が強く吹き雪を運んでくる…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・滝ノ小屋(2015年1月上旬) 湯ノ台から横堂経由で滝ノ小屋を目指す。新雪が降り積もった尾根道は困難を極めた。所により腰まで没するラッセルに時間がかかり大黒台で日没を迎えた。。翌日、濃霧の中を歩き始めて西物見付近まで登った時、急に霧が晴れて外…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・丸森(2014年3月下旬) 鳥海山を取り囲むように個性的なピークが並んでいる。それらの頂は、鳥海山を一望する展望台だ。月山森、笙ヶ岳、稲倉岳、丸森、飯ヶ森などがある。その一つ、丸森にテント泊をして3日間鳥海山を眺めた。 丸森のピークから見る鳥海…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

・伏拝岳(2013年3月下旬) 久しぶりに登った伏拝岳。懐かしさの中で雪山の美しさと怖さを同時に味わった。山の写真は、山の表情が劇的に変化する一瞬がチャンスと言われている。冬山ではそれが危険と隣り合わせであることを、この日の鳥海山が思い出させて…

鳥海山ーモノクロームの情景ー

写真表現の試行 写真を始めた頃、白黒フィルムを使い自家処理で現像して暗室で引き伸ばし作業に没頭した。色彩に溢れた世界を色の無いモノトーンで表現しようともがきながら写真技術を学んだ日々が懐かしい。今はデジタルデータを駆使することによって、あら…

追憶の山紀行

湿原を巡る山旅 今年の締めくくりは、1980年代に撮影した湿原の写真です。 ・月山弥陀ヶ原 ・栗駒山 ・月山念仏ヶ原 虎毛山 ・鳥海山 皆様、良いお年をお迎えください。

追憶の山紀行

田代岳 田代岳は、白神山地の東端の山である。鬱蒼と茂るブナ原生林の道を登り、九合目で森林限界に出ると目の前に広大な湿原が現れる。湿原の西に小高い丘の山頂があり、五穀豊穣の神「白髭直日神」を祀る田代神社がある。山頂へ向かう途中で振り返ると、大…

追憶の山紀行

湿原を巡る山旅 1980年代のある時期、東北地方の山中に広がる湿原を訪ね歩いた。ほぼ豪雪地帯にある山々の湿原は大半が雪田湿原である。いわゆる高層湿原と違って、湿原を形作る泥炭層が薄く、豊富な雪解け水で涵養される。ただ、泥炭層の厚さによる高層湿原…

追憶の山紀行

月山 3 賽ノ河原に上がり、山頂に続く木道を進む。月見ヶ原の沢が陽光に輝いている。天気は回復して、山頂に立つ月山神社がひときわ高く見えた。神社に入った登拝者一行の、お祓いと御祈祷の声や柏手が聞こえてくる。しばらくして、石段を下りてきた晴れ晴…