鳥海山ーモノクロームの情景ー

中島台

 変形膝関節症の症状があり、2年間冬山を控えていた。その間、膝周りを鍛える筋トレに励んだ。平地のウオーキングと軽い山歩きを続けているうちに奇跡的に痛みが消えた。膝痛が再発する危険はあるとしても、冬山を登れるのは今しかないと考えて中島台からの鳥海山北面の撮影を計画した。

 

・鳥越川(2019年2月下旬)

 未明に県道象潟矢島線の除雪終点から歩き始めた。中島台レクリエーションの森のブナ林に入り赤川の橋に行くと、橋の上にナイフリッジ状に雪が載っていて先に進めない。県道を第二発電所の入り口まで戻ることになった。気を取り直してスノーシューを履き、鳥越川に沿う林道を歩いた。獅子ヶ鼻湿原の西側を抜けて、一段上のブナ林の台地に着いた時はすでに昼を回っていた。立ち並ぶブナの間にテントを設営する。必要最小限の荷物を持って鳥越川右岸の三郎沼を目指した。急な斜面を登ると痩せ尾根に出る。右は鳥越川、左は鳥越川の水を赤川に引く半人工の水路だ。尾根の先に稲倉岳の東壁が見えてくる。痩せ尾根が左に曲がると、ブナの梢越しに新山と七高山が双耳峰の姿で見えた。

 付近はすでに稲倉岳の大きな影の中に入っていた。鳥越川右岸の台地で、北面を撮影するために夕方の時間を待つ。しばらくすると、南風が強まり身体を揺さぶるようになった。持っている衣類をすべて着込んでも、強風が運んでくる寒気に耐えられず、逃げるようにテントに戻った。

 

                ブナの間からから山頂が見えた

 

             痩せ尾根を登り切ると見えてきた山頂

 

                 そそり立つ稲倉岳東壁

 

                聳える双耳峰 新山と七高山

 

              激しく雪煙を上げる稲倉岳の尾根

 

 夜半から強風がブナを唸らせて激しく吹き荒れた。ジェット機が繰り返し通り抜けて行くような轟音は朝まで続いた。一睡もできないまま夜明けを待ってテントを撤収。下山した。