鳥海山ーモノクロームの情景ー

・影鳥海(3月1日)

 朝焼けが始まっていた。栗駒山と月山だけが雲海の上に頭を出している。朝日が昇る前に動き出さなければならないことが分かっていても身体が怠い。雪面から伝わってくる寒気でよく眠れなかった。寒さで固くなった身体の動きは鈍く、夜明けは近くで見るしかない。日の出に合わせて外輪の縁に立つと、雲海の上に現れた鳥海山の影が次第に明確になってくる。初めて見る真冬の影鳥海だ。

 荷物をまとめて下山を始めた。行こうと思っていた新山に背を向けて歩き出す。雲海が月山に繋がる架け橋のように視界を埋めていた。

                 雲海の上に現れた影鳥海

 

              千蛇谷と西鳥海が影の中に眠っている

 

                   雲海の果ての月山

 

                   朝陽を浴びる新山

 

                 新山 下山を前にして

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・七高山に立つ(2月28日)

 目の前を覆い尽す、エビノシッポという軽い響きでは表現できない重量感に溢れる氷の集合体。稜線上の小さな火山礫から大岩まで、すべての突起物が分厚い岩氷を纏っていた。七高山に立ち外輪内壁を振り返る。彼方に月山と朝日連峰が、さらにその先に見えるのは飯豊連峰だ。北峰から見返すと、七高山のピークがが西日に輝いていた。

                外輪稜線に立ち塞がる虫穴

 

         複雑に成長した岩氷が烈しく吹き付ける季節風を表現

 

                   岩氷と七高山

 

               厳しい季節風を物語る外輪内壁

 

           北峰から見た七高山 彼方に月山と朝日連峰

 

                  夕陽に輝く外輪山

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・滝ノ小屋からソロバン尾根を登り、伏拝岳から虫穴へ(2月28日)

 ソロバン尾根を登り伏拝岳に着いた時、Hさんが新山から戻ってきた。35年振りの新山登頂を祝福し、下って行く姿を見送る。行者岳の先の鞍部でビバークの準備を済ませて、最小限の荷物を背負い七高山に向かった。

         千蛇谷にトレースがあり、単独の登山者が登って来る

 

                 新山から戻ってきたHさん

 

  

                  外輪の尾根を覆う岩氷

 

                 虫穴と七高山が見えてきた

 

                岩氷の先に虫穴が立ち塞がる

 

            虫穴の前から振り返る 遠く月山が見えた

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影鳥海の撮影(2017年2月27日~3月1日)

 中学生の時、影鳥海を見たのが鳥海登山の始まりだ。七高山で御来光を拝み、振り返って影鳥海に感動し、千蛇谷に流れてきた霧に現れたブロッケンに衝撃を覚えた。この時から半世紀をかけて鳥海山に登り続けてきた。

 これまで撮影した鳥海山の写真を振り返り、影鳥海の写真が無いことに気が付いた。影鳥海は夏山限定の風物詩であるという固定観念に縛られていたことと、多くの登山者で混雑する盛夏の山頂小屋に泊ることを出来れば避けたいということが、影鳥海を撮影する機会を持たなかったことの原因である。しかし、考えてみると影鳥海は夏山限定の風景ではないのであって、鳥海山と太陽があれば年中絶えることなく影鳥海は出現しているのである。そんな当たり前のことに気付いた時から「四季の影鳥海」の撮影が鳥海登山のテーマに加わった。

 2月末から3月初めにかけて、天気予報が3日間の晴天を伝えている。真冬の影鳥海を撮影するチャンスが巡って来た。入山に一日目を費やすとして、その翌々日の日の出時間に外輪山に立っていれば撮影は可能。あとは自分の体調と天気次第だ。この3日間は新月であり月明かりが期待できず、夜間登山は難しい。そこで、外輪山ビバークを計画した。場所は、若い頃に雪洞を掘って泊ったことがある行者岳の鞍部しかない。

 

・滝ノ小屋に荷物を置きソロバン尾根末端まで(2月27日)

 滝ノ小屋の手前で追いついてきた登山者は知人のHさんだ。明日、新山を目指すと言う。夕方までの時間、二人でソロバン尾根末端までルートフラッグを設置する。ソロバン尾根に登り着いた時、弱い西風に乗ってダイヤモンドダストが飛びサンピラーが出現した。

                 霧氷を纏うダケカンバ

 

          ルートフラッグを立てながらソロバン尾根に向かう

 

                ソロバン尾根末端で見た岩氷

 

                 風紋の雪原とサンピラー

 

                  雲流れる月山森

 

            ダイヤモンドダストが降り積もった雪原

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・伏拝岳から七高山

 西風に煽られながら伏拝岳に立った時、目の前が開けるように雲が流れて、新山と取り巻く外輪山が姿を現した。外輪山を歩き、見えてきた七高山に向かった。

                   亀の手を思わせる岩氷

 

                                                                      外輪内壁と西鳥海

 

                                                     細長く伸びた岩氷 奥に七高山

 

                                                            外輪山から新山を望む

 

                                     七高山から見る新山 右に鍋森と笙ヶ岳が見える

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七高山(2016年3月上旬)

 先月、晴れ渡った外輪山を見上げて河原宿から下山した。冬の山行は天気に恵まれることが少なく、いつもいつも満足のいく山行が出来るわけではない。それだけに前回の晴天を見逃したことの悔しさは大きかった。

 しばらく居座っていた寒気が抜けて、予報は天気の回復を伝えていた。チャンス到来だ。ふたたび、滝ノ小屋に登る。ふたたびではなく三度四度・・・、冬になると、過去に数えきれないほど滝ノ小屋に登ってきた。雪の表情は一度として同じときは無く、いつも新鮮だ。ただ、最近の暖冬と寡雪の現状を見るたびに、地球の将来に不安を感じてしまう。

 

・強風のソロバン尾根を登り、伏拝岳に立つ

           ソロバン尾根の岩氷 向うに仙ヶ洞が見える

 

                   岩氷と流れる雲

 

      ソロバン尾根上部を見上げる 強風で発生した旗雲が湧き上がった

 

                  伏拝岳で見た新山

 

                  次第に雲が消えていく

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・河原宿

 しばらく外輪山に登っていないので、明日は晴れていたら行こうと思っていた。夕方になって携帯が鳴り、明後日の午後に仕事が入ってしまった。明後日の午前中に下山できれば仕事に間に合うのだが、気持ちを切り替えるのが面倒だ。それに、山では何があるか分からない。明日の下山を決めた。

 翌朝、きれいな朝焼けで夜が明けた。登山口から山頂を日帰りする登山者も多いのだから、外輪山に登っても今日中の下山は可能だろう。しかし、それは若い登山者のことかもしれない。外輪山を見上げながら悩んだ結果、河原宿散策に決めた。

             風紋が広がる河原宿から見上げる外輪山

 

                  不思議な形の風紋

 

                悔しい思いで見上げた外輪山

 滝ノ小屋に戻り荷物をまとめた。青い空を見上げ、何度も外輪山を振り返りながら下山の途についた。

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湯ノ台から河原宿(2016年2月中旬)

 冬になると寒気が緩む隙に滝ノ小屋に通っている。テーマにしている「風紋の雪原と岩氷に覆われた頂稜」を撮影できるチャンスがなかなか巡って来ないから何度も登ることになる。暖冬続きの日本列島だが、無理が効かなくなった自分の年齢で、あと何年登ることが出来るかを考えることが多くなった。

 晴天が見込まれる日を待ち、2泊3日の計画を立てた。と言っても1日目に滝ノ小屋に入り上部に向かうチャンスを待つだけだ。滝ノ小屋まで登ると、白糸ノ滝の下に広がる雪原にきれいな風紋が出来ていた。晴れてきた上部を見ると、ソロバン尾根の露岩やブッシュが露出している。相変わらずの雪不足だ。

          雪庇を付ける西物見の尾根 彼方に見える海岸線

 

                小屋に向かって最後の登り 

 

     八丁坂と風紋の雪原 積雪が少ないために白糸ノ滝の窪みが出来ている

 

               雲の向うに白い外輪山が見えた

 

             全容を現した外輪山と雪原の光と影

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・月山森

 予報通り晴天の朝を迎え、滝ノ小屋を未明に出発した。河原宿に上がってからも、外輪山に向かうか、月山森にするか迷っていた。結局、西寄りに90度方向を変えて雪原を横切って進む。これまで月山森に向かったのは、滝ノ小屋で時間を持て余した時や外輪山に立てるようなような天気ではない時ばかりだった。きれいに晴れ渡った朝の時間に月山森から西鳥海を展望したことがない。月山森に対して失礼な態度であったな、という反省を込めて月山森を目指すことにした。

         ボサ森と月山森の鞍部に近づくと扇子森が見えてきた

 

        エビノシッポに覆われた月山森から白い笙ヶ岳を望む

 

          鍋森 左後ろに長坂尾根の岩峰 右は鳥海湖の窪み

 

             天気の崩れが近いことを伝えるつるし雲

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湯ノ台から月山森へ(2015年3月下旬)

 再び滝ノ小屋に登った。何度登っても雪の表情は同じことが無いので飽きることはない。極端な暖冬のまま三月下旬になり、雪解けが始まっていた。滝ノ小屋に着いた日の午後から天気が崩れて、次の日の午前中まで湿雪交じりの強風が続いた。昼過ぎに、地元の高校山岳部の一団体が登ってきて小屋がにわかに賑やかになる。高校山岳部の雪山での活動が、森林限界を越えない範囲に制限されていることを顧問の先生に教えてもらう。夕日を受けて輝く外輪山を見上げて、小屋の前に立ち尽くす生徒の姿が印象に残った。

 

・河原宿まで

                  晴れてきた滝ノ小屋

 

             雲間の外輪山を見ながら雪原を登る 

 

               河原宿の台地を雲が流れて行く

 

              春の気配を感じさせる風紋と外輪山

 

                   夕陽を受ける外輪山

 仰ぎ見るソロバン尾根の雪の少なさに春の訪れを感じた。明日の予報は晴れ。予定を変更して、朝陽を受ける西鳥海を見に月山森に行ってみるか。

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・七高山(2015年2月下旬)

 伏拝岳から、新山を回り込むように七高山に続く外輪の尾根を辿る。行者岳から鞍部に下り、目の前の急斜面を見上げて、鉄バシゴのある正面を登るか右の吹き溜まりを巻くか迷う所だ。雪が安定しているようなので、右にトラバース。急な雪の斜面を登り切ると七高山は目の前にあった。白い雪のドームの新山を左に見て、少しの登りで七高山に着いた。七高山で、「厳冬の七高山は30年ぶり」と言う登山者に出会った。私も同じくらい久しぶりの七高山である。

            暖冬を象徴するように岩肌を露出した虫穴

 

               七高山北峰と眼下の稲倉岳

 

                 スノーブリッジと外輪山

 

              外輪の尾根を下山して行く登山者

 

                  午後の陽に輝く外輪山

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・外輪山(2015年2月下旬)

 夜通し吹いていた風は収まり、北の空に仄白く浮か外輪山の上空に無数の星が煌めいていた。アイゼンを履き、雪に埋まった荒木沢の斜面を登り河原宿に急ぐ。台地に上がった時、朝日が昇ってきた。急斜面に息を切らし、ひたすら登りそろばん尾根に上がる。傾斜を増す氷雪の斜面を越えると伏拝岳に着いた。外輪の縁から目の前に、千蛇谷を挟んで新山が聳えていた。いつ来ても感動の対面だ。

            伏拝岳から見る新山 その右奥に七高山

 

                  外輪内壁と七高山

 

                中島台から登ってきた登山者たち

 

                  岩氷を纏う七高山


 

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・河原宿(2015年2月下旬)

 スキーを履いて、鳥海牧場から登った。積雪は安定して、前回のようなラッセルの苦労もなく昼過ぎに滝ノ小屋に着いた。外輪山が見え隠れしている。アイゼンに履き替えて、強風の中を河原宿に登った。北風が強く吹き雪を運んでくる。寒さに耐えながら、風紋が刻まれた雪原を撮影した。

               風紋の雪原を地吹雪が流れる

 

                  風が刻む雪の造形

 

                雪が流れる河原宿の雪原

 

               西日に浮かび上がる雪煙と風紋

 

                 河原宿の雪原と外輪山

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・滝ノ小屋(2015年1月上旬)

 湯ノ台から横堂経由で滝ノ小屋を目指す。新雪が降り積もった尾根道は困難を極めた。所により腰まで没するラッセルに時間がかかり大黒台で日没を迎えた。。翌日、濃霧の中を歩き始めて西物見付近まで登った時、急に霧が晴れて外輪山が見えてきた。

 河原宿に続く雪の斜面に、流れる雲が影を落としていく。スキーを履いて登る一人の登山者がいることに気が付いた。

                                                  霧が流れて白い外輪山が見えた。

 

             霧氷が付着した西物見の灌木帯

 

              尾根の東側で雪庇が崩壊していた

 

                雪の大斜面を登る単独登山者

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丸森(2014年3月下旬)

 鳥海山を取り囲むように個性的なピークが並んでいる。それらの頂は、鳥海山を一望する展望台だ。月山森、笙ヶ岳、稲倉岳、丸森、飯ヶ森などがある。その一つ、丸森にテント泊をして3日間鳥海山を眺めた。

               丸森のピークから見る鳥海山

 

            雪原がうねる中島台 その先に七五三掛

 

                  中島台のブナ林

 

               霧動く白雪川流域のブナ林