追憶の山紀行

田代岳

 田代岳は、白神山地の東端の山である。鬱蒼と茂るブナ原生林の道を登り、九合目で森林限界に出ると目の前に広大な湿原が現れる。湿原の西に小高い丘の山頂があり、五穀豊穣の神「白髭直日神」を祀る田代神社がある。山頂へ向かう途中で振り返ると、大小約120の池塘が点在する湿原を見下ろすことが出来る。

 田代神社の例祭が半夏生の時期の7月2日に行われる。半夏生とは農事暦の一つで、ハンゲショウの葉が半分白くなる頃を言う。例祭では、池塘のミツガシワの生育状態を見て、その年の農作の豊凶が占われる。

 登ったのは祭りの前日だった。神社前の草原ででテント泊した翌日、祭りに参加する人々が次々に登って来た。聞くと、この後も大勢が登って来ると言う。急いで荷物をまとめ、混雑を避けるために早々に下山した。

                 池塘の先にに岩木山が見えた

 

                    湿原を見下ろす

 

               ミツガシワの群生する池塘の夜明け

 

           朝日に輝く池塘 霞の中に見えるのは八甲田山

 

                  湿原に群生するワタスゲ

                             (1988年7月上旬)

                      *概念図は地理院地図を使用