鳥海山ーモノクロームの情景ー

写真表現の試行 

 写真を始めた頃、白黒フィルムを使い自家処理で現像して暗室で引き伸ばし作業に没頭した。色彩に溢れた世界を色の無いモノトーンで表現しようともがきながら写真技術を学んだ日々が懐かしい。今はデジタルデータを駆使することによって、あらゆる写真表現が可能であると言われている。

 これまで雪山の色再現の難しさに悩まされてきた。表現したい雪の白は、青赤黄などの望まない色にいとも簡単に転びやすい。晴天の日の雪山が空の青を反映して青い山に再現されるのが良い例である。これを補正しようとすると、今度は赤くなったり黄色を帯びたりして非常に厄介だ。

 そこで、これまで撮影した写真のカラーデータをモノクロに変換して雪山を表現するとどうなるのか試してみた。現実を忠実に再現するカラー写真をモノクロ変換すると、いっきに抽象化されて表現上の節度を失って独善の世界に陥る危険を感じる。これも写真の面白さととらえて、しばらく写真表現の迷路に飛び込んでみようと思う。

 

・鳳来山(2012年1月中旬)

 この日は1月にしては珍しいほどの晴天だった。約20年ぶりにワカンを履き、過去の記憶を蘇らせながら湯ノ台から歩き始める。南校ヒュッテから雪庇の尾根を辿り鳳来山に着いた。真綿雲が流れる穏やかな外輪山を眺めていると、一人の登山者が登ってきた。「横堂までの試登です」と言うその人は、月光坂を途中まで登って帰って行った。

             薄っすら積もった雪にノウサギの足跡

 

             鳳来山から晴れ渡った外輪山を見る

 

                雪庇が張り出した横堂の尾根

 

                鳳来山を登り返して帰って行く

 

 この日をきっかけに、約20年のブランクを経て雪山登山を再開した。