追憶の山紀行

湯殿山

 凍結した月山道を越えて志津に向かった。弓張平に着くと月山、姥ヶ岳、湯殿山、三つの白い山が見えた。湯殿山に、西から黒い雲が流れているのが気になる。志津の温泉街を抜けた先の除雪終点に車を止めた。

 旧六十里街道の入り口でスキーを履き、石跳川の橋を渡り右岸のブナ林を進む。雪に埋もれた自然博物園の建物を対岸に見て、右の尾根に張り出した雪庇の下を歩く。適当な所から雪庇を越え、ブナ林が広がる雪原に上がった。朝に見た湯殿山の雲はすっかり消えた。姥ヶ岳もきれいに見える。

                 霧氷が輝くブナ林を行く

 

       湯殿山1500m 山頂から右に落ちる尾根が目指す南東尾根

 

                   姥ヶ岳

 

 ブナの森林限界が見えてくると、南東尾根の急斜面が始まる。斜面はアイスバーンに薄っすら新雪が載った状態。未熟なスキー技術ではアイスバーンに対応できず、足かせになるスキーをデポすることにした。アイゼンに履き替え身軽になりアイスバーンの急斜面を登った。登るにつれて、西に摩耶山が見えた。振り返ると朝日連峰が輝いていた。

                 摩耶山が見えた

 

        朝日連峰の展望 手前は石見堂岳から赤見堂岳に連なる尾根

 

             姥ヶ岳中腹のブナに霧氷が付いていた

 

 石跳川を隔てて姥ヶ岳が大きく見えてくる。山頂に立つと360度の眺望が広がった。ようやく、姥ヶ岳の上に月山の山頂が見えた。風雪に刻まれた姥ヶ岳の山肌は強烈で、何やら怖い印象がある。遠くには真っ白な鳥海山が見えていた。

                    姥ヶ岳

 

            山頂に広がる風紋の向うに月山が現れた

         手前から 湯殿山北峰 姥ヶ岳 品倉尾根 月山

 

                遠く雲海に浮かぶ鳥海山

 

 春を思わせる陽光は暖かく感じられた。しかし、風は肌を突き刺すような冷たさで吹き付ける。眺望を楽しませてくれた山頂に別れを告げて往路を下山した。

                             (2013年3月中旬)