鳥海山ー山歩き雑感ー
20、千畳ヶ原
千畳ヶ原は憧れの地。周囲を峰々に囲まれた緩やかな湿原が広がっています。厳しい山行が続いた後は、いつも広大な湿原に敷かれた木道に腰を掛け、周りを取り囲む峰々を見渡し無為の時を過ごしました。それでも、ここに来ることはなかなか簡単ではありません。二ノ滝や万助を登って来るか、鳥海湖から下って来るのか、巨岩を縫って幸治郎沢を下るか、いずれの行程もそれなりに歯ごたえがあります。
冬は、千畳ヶ原を目指すことが困難への挑戦のようなもので、数回訪れただけです。真白な雪原が眩しかったことを思い出します。
最も多く訪れたのは、草紅葉が爽やかに揺れる秋です。障壁のように立ち塞がる笙ヶ岳、鍋を逆さにしたような鍋森や扇子森、冬を待つだけの文珠岳と伏拝岳、華やかに着飾った月山森。天気さえ穏やかならば、個性豊かな峰々に囲まれた琥珀色の草原をのんびり彷徨うことができる季節です。
なぜここに千畳ヶ原が出来たのでしょう。
大昔、西鳥海火山体が山体崩壊を起こし馬蹄形カルデラが形成された。その後、東鳥海火山が活動を始めた。活動をつづけた東鳥海火山体は西鳥海をしのぐ高さに成長し、噴出した溶岩は西鳥海馬蹄形カルデラの底に流れ込み溶岩台地を造った。この溶岩台地の上にスコリア(火山砕屑物、火山礫や火山灰のこと)が、厚さ10mほど降り積もり千畳ヶ原の土台が出来た。土台の上に生えた植物の屍骸は低温のために腐敗が進まず、泥炭化した泥が堆積して湿原が形成された。
このような過程で千畳ヶ原が出来たと言われています。
溶岩台地に降り積もり千畳ヶ原を造ったスコリアは、いったいどこから来たのでしょうか。