鳥海山ー山歩き雑感ー
5、外輪の尾根に転がる大岩
背後の雲海が彩を添える七高山を眺めながらひと休み。山頂に多くの登山者が集う賑やかな夏山風景が広がっています。鋭鋒の七高山ピークに、周囲の岩とは明らかに異質な巨岩が目につきました。今にも落下しそうに断崖に引っ掛かっています。その手前にも同じような明るい色の岩が転がっていました。
外輪山を下る途中、これまでは何とも思わなかった大岩が気になって仕方がありません。この岩も周囲の赤茶けた溶岩塊と明らかに異質です。
鳥海山の岩は全て安山岩と言われています。外輪の尾根は、赤茶けた溶岩の塊やそれが風化したスコリア(火山灰や火山礫)で構成されています。噴出した後に火山ガスが抜けて、その後風化して脆くなった溶岩塊がほとんどです。
外輪の稜線上に、周囲の溶岩塊と異質な岩は意外に多く見られます。この灰色でいかにも固そうな岩はどこから来たのだろう?外輪の尾根が浸食されて現れた、または壁が崩れて転がった、など色々可能性はありますが、外輪の上に載った姿から、どこからか飛んできたと考えるのが妥当ではないかと思いました。こんな大岩がどこから飛んで来るのかと言えば「新山」しかありません。
溶岩を噴出した噴火で一番新しいのは1801年の新山溶岩ドームが形成された大噴火です。その噴火を外輪山で目撃した遊佐町石辻の阿部政吉さんが書いた記録が、昭和48年発行の「飽海郡誌」に掲載されていました。
亨和元年(1801年)三月八日
・・・山嶽鳴動して只眞闇暗二成て「グワラ グワラ」と降る大石小石雨霰玉の如く七高山の半腹二落散・・・
・・・享和元年7月13日は所謂大焼、最も猛烈に極ム。コノトキ新山噴出ス。故に新山ハ一名享和嶽トイフ。・・・
新山溶岩ドームは極めて粘性の高い溶岩の噴出により形成されました。噴出した溶岩や火山弾は、ガスの放出が少なく流動性の低い塊状であり、現在見ることが出来るそのままの形に近かったと思われます。
外輪山に登り、新山を見るたびに「グワラ グワラ」が聞こえてきます。