鳥海山ー山歩き雑感ー

15、康新道のチョウカイフスマ

 日増しに深まる秋の日に康新道を歩きました。見上げる山頂は、雪の来るのを待っているだけのようです。

 足元の色付いた草紅葉の中に、黄葉したチョウカイフスマがありました。先端にまだ緑を残した姿から、鳥海山を代表する高山植物としての気品を感じました。

下向きに垂れ下がっているのは肉厚の葉が重いからかもしれません。

 黄葉した姿を見ていて、盛夏に咲き誇っていたチョウカイフスマを思い出しました。

チョウカイフスマやイワブクロが咲く康新道

 

 

 

 登って行く途中に雲の切れ間から西鳥海の扇子森や御浜方面が見えました。



 雲が動いている西鳥海との間には2500年前に起きた崩壊斜面があります。崩壊する前は、多少の凹凸はあっても一枚の斜面がつながっていたと言われています。(山歩き雑感の4に掲載した地形図を参考にしてください。)雲の向こうに外輪山から七五三掛を経て扇子森に伸びるカルデラ壁が見えます。

 康新道でチョウカイフスマを見ることが出来る最低標高は約1750m、西鳥海の扇子森でチョウカイフスマが咲く標高も約1750mです。

 ここからは、根拠のない想像です。「かつて鳥海山の山頂付近と北向きの斜面にチョウカイフスマが咲き誇っていた。そこに大規模な山体崩壊が起こり、チョウカイフスマの群落のほとんどが失われた。そして残ったのが康新道のある七高山北尾根と扇子森である。」

 康新道で見ることが出来るチョウカイフスマの群落は、鳥海山の中でも最も見事だと思っていますが、扇子森は階段砂礫の中に小さく生息しているだけであることが残念です。(扇子森のチョウカイフスマが、何者かによって移植されたとは思いたくありません。)おそらく扇子森がチョウカイフスマ群落の西端だったのでしょう。