追憶の山紀行

岩手山 1

 暗いうちに酒田を出発して、ようやく焼走り登山口に着いた。これから山頂を越えて八合目避難小屋まで行く予定。けっこう長丁場である。登山口で待ち合わせたのは、二十代の時に勤めていた会社の上司で山の師でもあるNさん。酒田から長距離運転をしてくれたKさんにとっても私と同じ立場になる。Kさんと私は同時期にその会社を辞めた。Nさんとは、約35年ぶりの再会になる。「コマクサが見頃ですよ」というお誘いをいただき、ここまでやって来た。

 爽やかなミズナラ雑木林の登山道を、焼走り溶岩流に沿う形で登ると傾斜が増して第二噴火口に着く。扇状に流れた溶岩を俯瞰する展望台があった。黒い溶岩流を見下ろし、その迫力にこの山が生きていることを感じる。間もなくザラザラ滑るスコリアの道に変り、道の両脇にコマクサが現れた。

                ミズナラ主体の雑木林を進む

 

             第二噴出口跡の展望台から山頂が見えた

 

              足元に咲くベニバナイチヤクソウ

 

                黒いスコリアの斜面に咲く            

 


 多くの花を咲かせる株が点在していた。これまで見たことのあるコマクサと比べて花の数が驚くほどい多く、薄紅色の花を引き立てる灰緑色の葉も素敵だ。黒いスコリアとコントラストを演じる華麗な花々に魅かれて撮影に夢中になった。NさんとTさんは遥かに先に進んでいることが予想されたが、この場を離れることが出来ない。往路を下山する予定なので、その時も撮影できることに気が付き、切り上げて二人を追いかけた。このコースの唯一の避難小屋がある平笠不動でようやく二人の姿が見えた。

              平笠不動避難小屋から見る薬師岳

                           (2015年7月3~4日)

 

                      (概念図は地理院地図を使用)