鳥海山ー山歩き雑感ー

2、スノーブリッジを渡るツキノワグマ

 鳥海山の山中を歩いていて、ツキノワグマを目撃したことは何度かあったのですが、この日まで撮影したことはありません。突然至近距離で出会うのでなければ撮影したい気持ちは大いにありました。

 この日、早朝に滝ノ小屋を通過して、わずかに残雪を残す白糸ノ滝を目指しました。コバイケイソウが咲いていて、澄郷沢に架かるスノーブリッジから微かにガスが上がり、朝の爽やかさを感じながら登って行きました。滝の前まで登って、やせ細ったスノーブリッジと音を立てて落ちる白糸ノ滝をカメラに収めました。この時、沢の左岸にいたツキノワグマに全く気が付きませんでした。

コバイケイソウの咲く斜面を白糸ノ滝に向かって登る

雪渓と白糸ノ滝

 

 カメラを縦位置にかえてファインダーを覗いていた時、何か黒いものが視界に飛び込んできました。それがツキノワグマと気が付くまで数秒かかったと思います。夢中で数枚シャッターを切りました。我に返った時、ツキノワグマは今にも崩れ落ちそうな雪渓を渡り対岸の草むらに座り込み、雪解け後に芽生えた若草をムシャムシャ食べていました。

スノーブリッジを渡る

渡り終えたツキノワグマ

 カメラのファインダーを通して見た印象では小グマとしか思えなかったのですが、対岸に渡って若草を食べている姿は大きな成獣でした。距離は30mほど、大きな滝の音で人の存在に気が付いてないかもしれないからと、手を叩いたりホイッスルを鳴らしたりしました。ツキノワグマは食べるのを止めて「うるさいやつだなー」とでも言うようにこっちを睨みつけ、斜面を登って行って見えなくなりました。

 下山してから写真を見返すと、クマの着ぐるみを着た人間がスノーブリッジを渡っているように見えます。それにしても、ツキノワグマが薄くなったスノーブリッジを渡れると判断した理由はいったい・・・。それとも単純に、結果が崩れなかっただけと思ってもいいのだろうか。なんとも不思議です。