鳥海山ー雪と氷の季節ー

冬の鳥海山の主役は、日本海を渡って来る季節風です。

登山者は主役のご機嫌を伺いながら活動します。

若い頃のことですが、標高2000m付近で、吹き荒れた強風にいとも簡単に吹き飛ばされたことがありました。

その時から、鳥海山に登る時はいつも「風」を意識してきました。

写真撮影も「風」をテーマにしようと考えてきました。

 


しかし、冬の鳥海山には冬型の気圧配置が崩れて季節風が弱まった時にしか登ることができませんでした。

風の強い時は、常に濃霧や猛吹雪が吹き荒れていて、撮影どころか登山活動もできません。

稀に訪れる晴天時に、中腹の雪原を横断した時や、氷化した雪面を登り外輪山に立った時、足元の雪面や視界の先の岩稜に季節風の爪痕を見て感動しました。

まさに「季節風の置き土産」でした。

風を見ることはできませんが、風の爪痕は撮影のテーマになりました。

 

今回の一連の写真は、ほとんど晴天時の静かな風景を写したものです。

私の能力では季節風が収まった時にしか撮ることができなかったのです。

それでも、雪原に現れる風紋や頂稜を覆う岩氷の姿から、冬の鳥海山に吹く「季節風」を感じ取ってもらえれば幸いと思います。